CAPITAL < Game of Capital >
服飾美術家KUROTORAによるアートプロジェクト「Game of Capital」は、購入者に「資本のゲーム」を楽しんでもらう作品です。
ここでは「Game of Capital」のサブプロジェクト「CAPITAL」シリーズを展開しています。「CAPITAL」シリーズは「GAME of CAPITAL」を構成する重要なプロジェクトであり、シルクスクリーン作品をとおして“資本主義的ジレンマ”を体感できる仕組みが特徴です。
私の作品は、あなたの資本になります。
ご自身でTシャツなどに印刷して着て楽しめますし、印刷したものを販売し利益を得ることもできます。原盤をコレクションして楽しむのもいいかと思います。原盤の価値を上げるために宣伝をするのもいいでしょう。
資本主義が生むアートの価値変動:シルクスクリーン原版の所有がもたらす哲学と経済
ポップアートと複製可能性のパラドックス
アンディ・ウォーホルは20世紀のポップアートを代表する存在であり、芸術と大量生産の境界を大胆に融解させました。彼は新聞の写真などから版画技法のシルクスクリーンを用いて作品を量産し、ニューヨークの「ファクトリー」と呼ばれるスタジオでスタッフを雇って流れ作業で制作を行いました 。絵画を自ら手で描く伝統的な画家像を覆し、自身は経営者(プロデューサー)として作品を世に送り出したのです。この手法によりキャンベルのスープ缶やマリリン・モンローの肖像など同一図像の反復を作品化し、大量生産・大量消費の時代を映し出しました 。ウォーホル自身、「金稼ぎはアートであり、良いビジネスは最もよいアートだ」と語っています 。この言葉通り、彼の作品は商業的成功と芸術的評価を両立させ、アートが資本主義社会でいかに商品(ビジネス)となりうるかを体現しました。実際、ウォーホルの作品は複製可能にもかかわらずオリジナルの版で刷られたものは高額で取引され、2022年には《ショット・マリリン》が約250億円で落札され20世紀美術の最高額記録を樹立しています 。これは大量生産されたアートであっても、「本物」であり希少性が認められるものは資産価値を持ち得ることを示す極端な例と言えるでしょう。
資本主義における所有と希少性:原版が握る価値のゆらぎ
シルクスクリーン作品の原版(版そのもの)を購入者が所有し、自らの判断で作品を刷ることができる場合、その作品の市場価値は独特のダイナミクスを帯びます。経済の原則では、商品の供給量が増えれば一つ一つの価格は下がり、希少であれば高くなる傾向があります。アート市場も例外ではなく、「作品の希少性がその価格の主要な決定要因である」と指摘されています 。通常、版画作品は価値を保つために限定部数(エディション)が定められ、既定数を刷った後は版を破棄する慣習すらあります 。そのためコレクターは、追加の刷り増しが行われないという信頼のもとで作品を購入します。もし購入者であるあなたが原版を手に入れ、版を保持したまま更に刷ることが可能だとしたら、供給をコントロールする力を持つことになります。このとき直面するのが複製可能性と希少性のジレンマです。新たに刷り増せば、自ら追加の利益を得たり多くの人に作品を行き渡らせたりできる一方で、一枚一枚の希少価値は低下し市場価格も下がる可能性があります。しかし刷り増しを行わず版を温存すれば、現存する刷り作品の希少性は守られ高い価値が維持されるでしょう。まさに供給量と価値の綱引きをオーナー自らが演出できるのです。
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「CAPITAL」シリーズは、「GAME of CAPITAL」を構成する重要なプロジェクトであり、シルクスクリーン作品をとおして“資本主義的ジレンマ”を体感できる仕組みが特徴です。作品のオリジナル版(版画を刷るための版)を所有することで、「いつ、どのタイミングで、どれくらい刷るのか」を自らコントロールしながら作品を市場に出すことができます。
ポイント1:希少性と市場価値
希少性の維持
刷る枚数を少数に限定すれば、市場に出回る数が限られるため、一枚あたりの価値が高まりやすくなります。限定エディションとすることで“希少なアート作品”としての魅力を高められるわけです。
追加印刷による利益追求
人気が高まっているタイミングを見計らって一気に刷ることで、短期的には大きな利益を得られる可能性があります。しかしその一方で、市場に流通する量(供給量)が増えるほど、一枚あたりの価値は下落するかもしれません。
ポイント2:原版の劣化リスク
シルクスクリーン作品は、何度も刷るほど版が摩耗し、画質やディテールに影響が出ることがあります。さらに、版の劣化が進むと、“元の版”そのものの価値までも下がりかねません。「刷れば刷るほど劣化し、作品価値に影響が出る」というリスクが常につきまとう点が大きな特徴です。
ポイント3:アートをめぐる経済ゲーム
「刷るか、刷らないか」という判断には、以下のようなジレンマが含まれます。
短期的な収益最大化 vs. 長期的な希少価値維持
過剰に刷って短期収益を追うと、作品の市場価値や原版の価値が下がる可能性があり、長期的に不利になることも考えられます。
オリジナル版の価値と市場価値の連動
版の劣化が進めば、今後刷る作品のクオリティ自体が落ちるため、結果的にオリジナル版の信用や価値にもダメージが及ぶリスクがあります。
こうしたプロセスそのものが、アートを媒介とした“資本主義の縮図”にもなっているのです。
「CAPITAL」シリーズは、ただアート作品を購入・販売するというだけでなく、アートの供給量と価値の関係を“所有者兼創造者”が体感的に理解するためのシステムといえます。刷るたびにリスクとリターンを天秤にかけることで、作品の希少性・市場価値・原版の劣化といった要素が、リアルな“経済ゲーム”として目の前に立ち上がるのです。
希少性と資本をどう扱うのか
作品価値はどのように生まれ、どのように損なわれるのか
アートと資本主義の関係とは何か
これらを直接“体験”できるのが「CAPITAL」シリーズならではの魅力といえるでしょう。